赤い封筒 – 第2話

 シンイチはそう言うと、ファイルのページをめくって別の事件ファイルを示す。そこには被害者のプロフィールや死亡推定時刻などがざっと書かれているが、その中に警察側が「詩のようなメモが現場近くで見つかったが、犯行との関連は不明」と記している箇所があった。情報は限定的であり、どんな詩なのか具体的な文面は残されていないようだ。

「こうした未解決事件は複数あって、どれも捜査が進んでいない。おそらく犯行動機も手口もバラつきがあるから捜査が難航してるんだろう。ただし、いくつかの現場に“詩”という共通ワードが出てくる点は看過できない。」

「赤い封筒の詩は、正直まだ被害者や事件と直接結びついているかどうか分からない。だが、偶然にしては出来すぎてる気もするんだ。」

「だな。もしかすると、おまえに届く詩とこれらの事件を結びつける何かがあるかもしれない。」

 アキラは資料を読み進めるうちに、背筋に薄ら寒さを覚えた。被害者の周囲に残されていたのがもし同じ詩であるなら、自分にも何らかの形で危険が迫る可能性がある。だが、まだあまりにも情報が足りない。

「シンイチ、この資料をもう少し詳しく調べることはできるか? 俺も調べたいが、専門的な捜査情報はどうにもならないし。」

「やってみるよ。俺は民間調査員だが、昔の刑事仲間から裏を取れるかもしれない。ただ、多くを期待するな。警察は未解決事件の核心情報をそう簡単に外部へ出さない。かといって、非公式の手段で深入りするのはリスクがあるからな。」

「わかった。無理は言わないよ。……ところで、もしこの詩と事件に関連があるとしたら、犯人の意図は何だろうな。わざわざ詩を残すなんて、まるで創作か芸術のようにも見えるけど。」

「そこは犯人の精神的な動機かもしれん。あるいは被害者に向けたメッセージなのか、第三者に向けたサインなのか……色んな可能性が考えられる。捜査では、犯人が何らかの暗号として使っているケースも視野に入れてるそうだ。」

タイトルとURLをコピーしました