赤い封筒 – 第2話

 シンイチの推測を聞きながら、アキラの胸中にある感情がむくむくと膨らみ始める。作家として長くミステリー作品にも携わってきたアキラは、こうした不可解な事件や背後に潜む動機に強く引き寄せられる性分だ。それは単なる好奇心というより、創作の原動力とも言える。

「……シンイチ、今回のことをネタに、小説を書いてみたいと思ったら……どう思う?」

「小説? おまえ、まさか創作にしようってのか。いや、止めはしないけどな。変に犯人を刺激しないように気をつけたほうがいいぞ。」

「もちろん。その辺は慎重になるよ。でも、事実としてこうして詩が届き、事件にかかわりがあるとしたら……書かずにはいられない気がしてきたんだ。もともとこの不可解な詩に翻弄されてるわけだし、うまく言葉に落とし込まないと自分の中で整理できない。」

「……わかった。とにかく気をつけろ。下手に掘り下げすぎて、おまえ自身が標的になるなんて馬鹿馬鹿しいからな。」

 シンイチはそう言い残しながら、机の上の資料を再び整理し始める。アキラは無意識に握りしめていた赤い封筒を見下ろした。赤い色がこれほどまでに不穏に見えるのは、おそらく自分の後ろめたさや恐怖が投影されているからかもしれない。だが、その恐れとは裏腹に、筆を執る手が疼いているのを自覚する。過去にも社会派の事件を題材に小説を書き、多くの読者に衝撃を与えたことがある。そのときの執念にも似た感情が、今また胸奥で呼び起こされていた。

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