赤い封筒 – 第3話

 シンイチの目は鋭く、それでいてどこか迷いも感じさせる。元刑事としての正義感と、民間調査員としての実務的な冷静さとのせめぎ合いがあるのだろう。これ以上大事になれば、素人のアキラたちを巻き込むことに罪悪感を抱いているのかもしれない。

「私も出版社の一員ですから、先生に何かあったら大問題です。放っておくわけにはいきません。」

「わかった。じゃあ次の行動としては、もう少し事件の詳細を追うか。被害者の共通点や詩を残した犯行の事例、そこを調べ続けるしかないな。」

 三人はしばし沈黙する。遠くから聞こえるのは、カウンター付近で店員が器を片付ける音と、他の客の笑い声。外の世界は平穏そのものに見えるのに、まるで自分たちだけが異質な場所へ踏み込みつつあるようだ。アキラは拳を固めて思案する。何が正解か分からないが、黙っていても事態は進展しない。

「いっそ今回の赤い封筒の件を、俺の次の小説にしてしまおうかと思ってる。」

「先生、それはさすがに危険じゃないですか?」

「ユキノの言う通りだ。犯人がもしおまえの行動を注視しているなら、怒りを買う可能性だってある。」

「……だけど、このまま詩に振り回されてるだけじゃ落ち着かないんだ。自分の書く小説の形で、事実を整理してみたい。もしかしたらヒントが見えてくるかもしれないし、書きながら気づくこともあるかもしれない。」

タイトルとURLをコピーしました