赤い封筒 – 第3話

 その日の夕刻、アキラとユキノはシンイチを加えた三人で、小さな喫茶店に集まった。打ち合わせ用の個室スペースがあり、人目を気にせず話せそうな場所だ。テーブルに並べられた飲みかけのコーヒーカップと資料ファイルの山。シンイチはアキラから赤い封筒を受け取り、カードを一読すると、軽く舌打ちを漏らす。

「今回の文面、かなり物騒になってきたな。これはただの遊びや自己顕示欲というより、何かを予告している可能性を感じる。」

「僕もそう思う。『血の詩』っていうフレーズはあからさまに物騒で、予告殺人を示唆してるともとれるし……。」

 ユキノは黙ってうつむく。アキラは彼女の肩越しに視線をやりくりしながら、シンイチを見つめる。

「シンイチ、もしこいつが予告殺人的な意味を持つなら、どんな狙いが考えられる?」

「さあな。犯人が自己満足のためにやっているのか、実際にターゲットを殺害しようとしているのか。いずれにせよ、この詩の書き方は“誰かが死ぬ”ことを前提にしているように読み取れる。おまえやその周囲に危険が及ぶかもしれない。」

 アキラは息を詰める。すでに警察に相談しても反応は薄い状況。なのに文章がエスカレートしているという事実。いよいよ無視できない段階だと、全身で感じ始めている。

「それで、次に狙われるのがどんな人物か、何かピンと来ることはあるのか?」

「実は昨夜、この詩を読んでからいくつかの事件記事を洗い直してみた。すると、ある特徴が浮かび上がったような気がするんだ。」

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