赤い封筒 – 第3話

 アキラはスマートフォンを取り出し、メモアプリにまとめていた考察を読み上げる。これまでの未解決事件で、被害者に共通する条件がわずかに見えてきた。年代や職業は多様だが、少なくとも表向きは社会的にある程度成功した立場にあったり、目立つ活動をしていたりするという点。また、事件後に不気味なメモや詩が残されていた事例が多い。だが、いずれも直接の関連性が決定打に欠ける。

「つまり、成功者や有名人が狙われやすい? 単に羨望や妬みを晴らすためかもしれないが、動機にしては大雑把すぎるよな。」

「そこが難しい。でも、もしこの詩が“次はおまえだ”と脅しているなら、俺だってターゲットとしてもおかしくない。実際、有名作家ってわけじゃないけど、そこそこ注目は浴びてるし……。」

 ユキノが苦い表情で口を開く。

「先生は受賞歴もあるし、メディアの露出もそれなりにあります。下手すると、出版社への攻撃にも繋がるかもしれない。私も正直、怖いです。」

「だが、警察はどのみち動かない。証拠不十分だと言われて終わりだろうな。詩の文面だけで捜査本部が動くとは考えにくい。」

「となると、やっぱり俺たちで何とかするしかない、ってことか……。シンイチ、危険を承知で悪いけど、もう少し調査を続けてくれないか。」

「俺は構わんが、おまえがこうやって首を突っ込む以上、安全は保証できないぞ。しかもユキノさんまで巻き込む形になるし。」

タイトルとURLをコピーしました