ユキノはそっと読み上げると、眉をひそめてアキラを見やる。これまでの詩が抽象的な印象にとどまっていたのに対し、今回の文面にはどこか直接的な脅迫を思わせる表現がはっきりとある。アキラの背中を冷たい汗がつたう。
「“血の詩”……だって。これはさすがにおかしいよな。ただの嫌がらせってレベルじゃないかもしれない。」
「私もそう思います。警察に届け出たほうがいいんじゃないですか?」
だがアキラは首を振る。ここ数日、シンイチが未解決事件の情報を追っていたが、警察の捜査は依然として動きが鈍く、実際、赤い封筒に関しては証拠不十分という扱いをされてきた。今回の詩は脅迫的だが、まだ物的証拠があるわけでもなく、脅迫状と断定できるかも微妙だ。ユキノの表情に不安が濃くなる。
「それでも警察は早々には動かないでしょうね……。」
「そうだろうな。シンイチにも見せて判断してもらうよ。」
アキラはカードを封筒に戻し、鞄へしまい込む。心臓の鼓動が速く感じられる。まるで自身がターゲットにされているかのような恐怖が現実味を帯び、同時に奇妙なアドレナリンのようなものが湧き上がるのを自覚する。作家としての好奇心と、ただの人間としての恐怖。それらが相反する形で心を揺さぶっていた。


















