赤い封筒 – 第7話

 アキラはスマートフォンでニュースサイトを確認してみる。簡単な速報記事には「市内のマンション一室で死体が発見され、周辺に手書きのメモらしきものが残されていた。捜査当局は一連の未解決事件との関連を視野に入れている」という程度しか書かれていない。だが、文面の一部が「詩のような形式だった」という噂がネットで拡散され始めている。これまでの事件の手口とも共通点があるとなれば、ますます混迷が深まる。

 すぐにシンイチに電話をかけると、彼はすでにその情報を把握していた。いくつかのツテを使って、警察内部の話を断片的に聞き出しているようだ。

「現場に落ちていたメモの文言が、例の赤い封筒と同じような雰囲気らしい。被害者は中年の男性で、過去に何かしらのトラブルを抱えていた可能性が高いそうだ。まだ詳しいことはわからん。」

「過去にミツルと接点がある人物だったりするのか?」

「それも俺が探ってみる。とにかく今は、カメラ映像の人物が本当にミツルなのかどうか、一刻も早く確かめる必要がある。もし奴が生きているなら、今回の殺人とも繋がってくるはずだ。」

 アキラは受話器を握りしめながら、改めて状況の異常さに息を詰まらせる。かつては自分がほぼ忘れかけていた存在が、こうも大きな事件の裏側で暗躍している可能性がある。ミツルが死亡したとされる過去の記録は何だったのか。大学時代のトラブル、失踪、そして偽装死――どれも薄闇の中につながる道筋に思えてならない。

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