赤い封筒 – 第7話

「ひとまず、シンイチがその不審人物の映像を拡大したり解析したりしてる。成果が出れば、何か決定的なことがわかるかもしれない。」

「そうですね。でも、その間にも事件が重なったら……あまり考えたくありませんが、スピードが大事です。」

「俺もできる範囲で調べてみるよ。ミツルの戸籍や死亡時の状況など、記録を辿れば何かほころびが見つかるかも。」

 アキラはそう言いながら胸の奥に苛立ちを覚える。書きかけの原稿は滞り、生活そのものが危うい状態になっているのに、真相は見えてこない。さらに新たな事件が発生し、赤い詩が関与しているとなれば、自分の身に降りかかる危険もますます高まっている。それでも、ここで投げ出すわけにはいかないという思いが、ぎりぎりのところで彼を動かしていた。

 喫茶店を出るころには、日差しがやや強くなり、街の人通りも増えていた。ユキノと別れたあと、アキラはしばらく商店街を歩き回る。警戒しているつもりでも、すれ違う人々のどこかにミツルの影を探してしまう。半ば妄想のように、「あの後ろ姿が似ているのではないか」と目をこらすが、当然ながら確かなものは見つからない。

タイトルとURLをコピーしました