赤い封筒 – 第7話

 昼過ぎ、アキラはユキノと合流し、先日も利用した喫茶店に席を取りながら情報交換を始めた。店内はやや混雑気味で、会話の内容が漏れないよう声を潜める。

「シンイチさんの話によれば、防犯カメラに映った人物はミツルに非常に似ているらしいですよ。でも、死亡記録があるんですよね……そこが謎です。」

「偽装死の可能性は捨てきれない。あるいは双子とか、親戚がそっくりだとか、そんな荒唐無稽な可能性もゼロではないけど……。警察も捜査しているみたいだけど、細かいところまでは踏み込めてないようだ。」

「何より新しい殺人が起きてしまいましたし。そっちの捜査で手一杯なのかもしれません。……先生、まさか次は本当に先生が狙われるんじゃないかって心配で……。」

 ユキノの声には焦燥と恐怖が入り交じる。アキラもまた、その不安を強く感じていた。自分が過去にミツルを救いきれなかった、あるいは加害者側としての罪を負っているかもしれない。もし彼が復讐を成し遂げるために一人ひとりを葬っているのだとしたら、アキラはその標的リストの上位に入っていてもおかしくはない。

 だが、一方で「本当にミツルが生きているのか?」という疑問も尽きない。万が一、別人がミツルになりすまして犯行に及んでいるとすれば、動機は何なのか。あの詩を模倣し、被害者たちに接触しているのか。すべてが混乱したまま、答えの見えないパズルを組み立てるような気分になっていく。

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