赤い封筒 – 第12話

「たぶん、大学時代の知り合いってわけでもなさそうだ。もしかしたらファンとか、一方的に崇拝していた人間かもしれん。警察で詳しく調べるだろうが、被害者との関連から見ても、ミツルの敵を代わりに“処分”していたんだろう。」

 シンイチはそう言いながら、男が取り落としたバッグの中身をちらりと確認する。そこからは赤いインクのボトルや、複数の封筒、さらに被害者の名前が列挙されたリストのようなメモが出てきたらしい。いずれも事件との関連を示す重要な物証になるだろう。

「結局、ミツルは亡くなっていて……その意思を継ぐとか言ってたけど、ただの狂気にしか見えなかった。あいつを“芸術作品”だと言い張って……信じられない。」

「病的な執着だな。ミツルが受けた仕打ちに自分を重ねていたのか、それとも純粋に自分の欲望を正当化する道具にしたのか……いずれにせよ、これで事件は解決に向かうだろう。大きな犠牲を払ったがな。」

 アキラは力なくうなずく。これまでの未解決事件で命を落とした人々を思うと、胸が締め付けられる。赤い封筒が告げていた詩の数々は、亡きミツルの思念を利用した男の自己満足の表現だったのだ。最初はミツル本人が生きて復讐を行っていると思わせるように仕向け、過去の因縁ある者たちを次々と標的にしていった。その果てに、アキラまでもが殺されかけたのだ。

タイトルとURLをコピーしました