赤い封筒 – 第12話

「誰でもいいだろ。俺はただ、ミツルの思いを代わりに成し遂げているだけだ。あいつは俺に希望をくれた。世の中の理不尽と闘うための詩を、復讐するための意志を。消えてしまったあいつの代わりに、この世界に存在を示したかった。それだけさ。」

 男は言いながら、ゆっくりとその顔の一部を覆っていたフードを取る。そこにはミツルとはまるで違う容貌があった。歳もほぼ同年代と思われるが、細身で目つきが鋭く、唇の端が痙攣したように曲がっている。

「信じられないかもしれないが、ミツルはとっくに死んでる。数年前に病気で……正確には自殺かもしれないが、どのみち生きてはいない。それでも、あいつの作品や遺志はこの俺の中で息づいている。おまえや、あいつを苦しめた連中を裁くためにな。」

 その瞬間、アキラの脳裏に数々の未解決事件の被害者たちの顔がよぎる。大学時代、ミツルを見下し嘲笑した者たち。その家族や関係者が相次いで犠牲になり、現場には詩が残されていた。あれはすべて、この男の犯行だったのか。ミツル本人ではなく、彼を崇拝していたか、あるいは深く共感した誰かが――。

「待て、勝手なことを言うな。ミツルはそんなことを望んでいたのか? あいつは確かに苦しんでいたが、人を傷つけることを喜ぶような人間じゃなかった……!」

「どうだろうな。あいつの詩を読んだか? 絶望に塗れた言葉で満ちていたじゃないか。復讐を誓っていたじゃないか。あんたも見て見ぬふりをして、結局あいつを追い詰めた一人なんだろう?」

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