亡霊の街 – 第3話

第1話 第2話

佐伯は封鎖区域で見てきた光景や手がかりを、ノートやスマートフォンの写真を整理しながらひとつひとつ検証していた。焦げ痕、捨て置かれた古い新聞、そこに書かれていた大火災の見出し——何十年も前に起こった惨劇らしいが、実際にどの程度の被害があったのかはまだ曖昧だった。もっと深く掘り下げる必要があると感じた佐伯は、まずは確実な情報を得ようと図書館や公文書館、さらには大学の歴史研究者まで足を運ぶことにした。

「すみません、昭和○○年頃にこの地域で起きた火災の資料を探しているんですが」

図書館の受付で尋ねても、初めはなかなか詳しいものが見つからなかった。数枚の新聞のコピーと、当時の災害リストに名前が載っているだけ。焼け出された住民の数や死者の人数は膨大だと書かれているが、そのうち何人かは遺体が確認できなかったともある。周辺のデータを漁ってみても、大火災後の対応については不自然なまでに情報が抜け落ちていて、行政記録に矛盾した部分が多いのが気になった。

そんな中、古文書の一部を保管しているコーナーの棚に、埃をかぶった一冊の冊子が紛れ込んでいるのを佐伯は見つけた。半ば破れかけたその中には、大火災当時の混乱を示す走り書きのようなページがあり、「多数焼死」「行方不明者○○名」「検視不可」などという生々しい文字が列挙されている。追記のような形で、町内で見つからなかった遺体の数が相当数に上る可能性があるとも書かれていた。そして、一見すると別の資料と矛盾している部分があり、少なくとも公式発表より行方不明者が多かったことは確かなようだった。

「これじゃあ、当時の情報が正確に伝わってないということか…」

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