大空の船 – 第5章 前編

アルバトロスが漁船に接舷すると、中には痩せ細った男が一人乗っていた。聞けばエンジンの故障でほとんど漂流状態にあり、燃料も食料も底をついているらしい。アレンが手短に事情を聞くと、その男は怯えたような口調で「自分は小さな集落から魚介を運搬していたが、嵐を避けようと高度を変えたら機関が壊れ、身動きできなくなった」と語る。

「ありがとうございます。どこか近くの島まで乗せてってもらえませんか」

男はそう懇願するが、ライナスは地図を広げて首を振る。「今、近くに大きな島はなさそうだ。俺たちも補給のあてがなくて苦労してるくらいだしな」

すると、男は「実は高高度に浮かぶ都市があるって噂を耳にしたんです」と言い出し、アレンたちの目が一斉に真剣味を帯びる。

「高高度の都市……それはまさか、“空中都市”と呼ばれるような伝説の場所か?」

ライナスが身を乗り出して聞くと、男は不安げにうなずく。

「詳しいことは知らないけど、浮遊島のはるか上、雲の切れ間に大きな遺跡が見えたという話を昔から耳にしてたんです。そこには古代の技術や財宝が眠っているとか……ただ、ほんの一部の冒険者しか近づけないんだとか」

アレンは胸の奥がざわつくのを感じた。古代文明にまつわる噂はゴードンの工房時代から知識として触れてきたが、それが実在するかどうかは半信半疑だった。だが、もしそこに高度な技術や資源があるのなら、アルバトロスをさらなる高みに導く突破口になるかもしれない。

「できるかどうかは別として、行ってみる価値はあるんじゃないかな。空賊の脅威を振り払うような技術が手に入るかもしれない」

アレンが興奮ぎみに言うと、リタは少し心配そうな顔をしつつも「それが本当なら、資材不足も解消できるかもね」と口を開く。ラウルは操縦席に腰を下ろしたまま、真面目な面持ちで「危険は大きいが、今の航路を続けても燃料が底を突くだけだ。挑戦するしかないだろう」と呟くように言った。

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