大空の船 – 第5章 前編

ライナスが息を飲んで口にし、リタは安堵と驚きが混じった笑みを浮かべた。すべてのクルーが、まるで別世界に入り込んだかのような感覚を味わい、言葉を失う。そこは以前の雲海よりもさらに高い場所で、かつ未知の透明な空気に包まれている。

そして、遠くをよく見ると、微かに白い光の帯が天上へ伸びているように見えた。光の端には何やら巨大な輪郭が浮かんでおり、岩壁にも見えるが、整然とした構造のようにも思える。

「……あれが、伝説の空中都市?」

アレンがかすれた声でつぶやくと、クルーたちは視線をそろえてそちらを凝視する。まだはっきりとは見えないが、確かに自然の地形とは違う何かが浮かんでいるのがわかる。どうやら自分たちが求めていた“謎の空中都市”が、あの先に存在するかもしれない。

静かな高空域を進むアルバトロスの甲板には、不思議な緊張感と高揚感が同時に漂っていた。伝説と噂、そして誰もが夢想する“古代文明”の名残が、本当にそこにあるのか。もしあの都市に到着できれば、新たな技術や資源を手に入れられるかもしれない。あるいは空賊ガイウスのような者も狙っている可能性も否定できない。

「とにかく、あの光のある方向へ進もう。何が待っているにせよ、今の俺たちにできる道はそれしかない」

アレンの言葉に、リタは小さく息をのんで「了解」と応える。ラウルとライナス、そして助けられた男も含め、全員が黙ってうなずいた。雲海の向こうに広がる未知の空域へ、アルバトロスは再び帆をはり、エンジンを唸らせながらゆっくりと滑り込んでいく。

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