大空の船 – 第5章 前編

第1章:前編後編 第2章:前編後編 第3章:前編後編
第4章:前編後編 第5章:前編|後編

アルバトロスが再び離陸して数日が過ぎた頃、アレンたちは雲海よりもさらに上へ続く高空域を飛行していた。修理を終えたとはいえ、船体にはまだ補修の痕跡が目立ち、エンジンや外板は万全の状態とは言い難い。それでも、高度を上げれば上げるほど空気が澄み、地平線の向こうに幾筋もの光が交錯する様子が見える。その神秘的な風景に、クルーたちは危険を承知でさらに上を目指す決断をしていた。

「ラウル、どうだ? 操縦の感触は安定してるか」

甲板の端に立ってコンパスを覗き込んでいたアレンが、操縦席のラウルに声をかける。ラウルは操舵輪をしっかり握ったまま、小さく頷いた。

「今のところ大きな乱気流には当たっていない。ただ、これ以上高度を上げれば空気もかなり薄くなる。船体に過度な負荷がかからないよう、慎重に進むしかないな」

その言葉にアレンも重々同意し、「無理はしないでくれ」と声を抑えて返す。空賊との激戦を経て痛感したのは、“強引な飛行はすぐに船を限界へ追い込む”という現実だ。さらに高空には未知の気象現象が待ち受けているかもしれない。いくら夢を追いかけるとはいえ、アルバトロスが再び壊滅的なダメージを受けたら取り返しがつかない。

「ところでアレン。さっきからリタが機関室で騒いでるみたいだけど、何かあったのかしら」

艦橋寄りで航路図を検討していたライナスが、ちらりと後方を振り返りながら尋ねる。アレンはハッとして「確認してみる」と足早に船内へ向かった。機関室では、リタと彼女を補助する小柄な少女レイナが配管のバルブを握りしめ、慌ただしく点検をしている真っ最中だった。

「リタ、どうした?」

アレンが顔を出すと、リタは振り返りざまに苦笑いを浮かべる。

タイトルとURLをコピーしました