大空の船 – 第5章 後編

巨大な壁面の周囲を回りこんでみると、まるで半壊した門のような構造体が見えてきた。かつてそこが出入口だったのだろうか、石造りのアーチ型の門が上方に向かって破損し、吹きさらしになっている。

「ここなら、船を部分的に接岸させられそうだわ。あのアーチの上に少し平坦な場所があるように見える」

リタが望遠鏡を覗き込みながら指し示す。確かに、崩れかけた石の台座のようなものがあり、そこならアルバトロスが横付けできるかもしれない。アレンも望遠鏡を借り、目を凝らして確認する。

「うん、行けそうだ。そこで足場を組んで上陸してみよう。船を固定するにはロープで石の突起を利用できるかもしれない」

エンジンの出力を抑えつつ、アルバトロスは石造りの門に慎重に近づく。高さの合う位置まで気球の浮力を調整し、リタとレイナがロープを抱えて甲板端にスタンバイ。ラウルが声をかけるたびに少しずつ微調整しながら、なんとか船の側面を石壁の一角に接触させる形で停止させる。

「よし、固定するぞ!」

ロープをくくりつけたフックを石の裂け目に打ち込み、ライナスとリタが力を合わせて船体を動かないように固定した。エンジンを停止し、アルバトロスはかろうじて「空中都市」の一角に浮かんだまま休む格好になる。ホッとした空気がクルーの間に流れたが、同時に未知の遺跡へ足を踏み入れる緊張感が高まる。

「さて、それじゃあ上陸してみるか」

ラウルが操縦席を離れ、甲板で仲間たちに声をかける。アレンは肩に小さな道具袋を提げ、ライナスは携帯ランプと地図帳を抱えている。リタは緊急用の修理キットを持ち、万が一船が何かの衝撃で外板を破損してもすぐ応急処置できるようにしている。

「船に残って、エンジンと船体を見張っておいてくれないか?」

アレンはレイナにそう頼む。彼女は不安げな表情を浮かべながらも「うん、わかった。何かあったらすぐに合図するから」と答える。

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