大空の船 – 第5章 後編

アレンたち四人(アレン、リタ、ラウル、ライナス)は、ロープを使って石のアーチ部分へと慎重に移動する。そこから先は崩れた石畳が続き、さらに内部へ進むための通路らしきものが見える。視界に入る範囲だけでも、風化した彫刻や見慣れない文字のようなものが確認できる。

「うわ……想像以上に広大だ」

ライナスが低く呟き、リタはランプをかざして「どこから調べればいいのか、途方に暮れるね」と驚きの声をあげる。アレンは壁をそっと触れ、「この建造物自体、古代の技術で浮いているのかな。素材が普通の石とは違う感じがする」と観察した。

奥へ進むと、開けた広場のようなスペースに出た。中央には崩れた柱が何本も転がっており、床には複雑な模様が刻まれている。風が吹き抜ける音が微かに響き、時折古い瓦礫が落ちるかのようなカラカラした音が遠くで反響する。

「まるで誰もいない廃墟……かと思ったけど、足跡みたいなのがあるよ」

リタが床に注意を向けると、確かに最近歩いたような土の痕跡らしきものがある。ラウルが警戒を強め、「油断するなよ。もしかしたらこの都市に誰かが住んでいるのかもしれない」と言いながら背筋を伸ばす。

すると突然、石柱の陰から誰かが顔を出した。人の気配を感じたアレンたちは、思わず身構える。現れたのは年配の男性と思しき人物で、身につけている装束は粗末ながら、どこかこの都市の雰囲気に合う不思議なデザインだ。視線がぶつかると、その男性はすぐに物陰に隠れる。

「待ってください、危害を加えるつもりはないんです!」

アレンが声を張り上げるが、相手は動揺して逃げようとする。ラウルが素早く回り込もうとすると、別の方向から若い女性の姿が見え、「やめて、手を出さないで」と叫ぶ。どうやら数人の人々が隠れるように暮らしているらしい。

ライナスが両手を広げて「落ち着いてくれ。俺たちはただ、この都市にたどり着いただけで、敵じゃない」とアピールすると、女性のほうが警戒しながらも一歩出てきた。

「あなたたちは……外の世界から? どうやってこの都市に?」

タイトルとURLをコピーしました