大空の船 – 第5章 後編

長い沈黙ののち、リーダー格と思しきその男性が、「よかろう。まずは都市の外縁にある“書庫跡”へ案内しよう。そこには古代文字や断片的な設計図が保管されている。使えるかどうかはわからぬが、それらを見て、お前たちがどんな意図を持っているのか判断したい」と提案してくれた。アレンたちは緊張しながらも、内心で大きく胸を躍らせる。古代文明の中心地に足を踏み入れ、そこに隠された秘密や技術を覗けるかもしれないのだ。

こうして、思いがけず“古代文明との邂逅”の第一歩を踏み出したアレンたち。街の奥へ足を運ぶたびに、壮大で複雑な彫刻や文字、そして今は沈黙している巨大な装置が目に入る。そのすべてが圧倒的なスケールをもって“かつて空を制していた高度な文明”を物語っているようだった。

「すごい……これがもし本格的に動くなら、アルバトロスをもっと強化できるかも」

リタが目を輝かせると、ライナスは警戒を緩めずに「でも、ちゃんと制御しないと空賊が同じ技術を手に入れたら大変なことになるぞ」と低く呟く。ラウルも同意見らしく、「この技術が争いの火種になったという歴史があるなら、住民たちが警戒するのも無理ない」と口を挟んだ。

一方、アレンは巨大な歯車のような装置や水晶石が嵌め込まれたパネルを観察しながら、「これがもし、空に浮かぶ力を生み出す装置の一部なら……」と興奮を抑えきれない様子だ。腕時計のような携帯メモに走り書きを残し、リタと情報を交換している。

案内役の住民たちも警戒を解ききってはいないが、外の世界に興味を示す若者が何人か寄ってきて、「最近は本当に空賊が幅を利かせているのか?」「地上との交易はどうなっている?」と質問してくる。アレンやライナスができる範囲で回答すると、彼らは複雑な表情を浮かべ、「やはり外の世界はまだ混乱が絶えないのだな……」とつぶやいた。

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