大空の船 – 第5章 後編

その言葉にアレンは安堵の息をつき、「飛行船でここまで来ました。僕たちは……この都市を探していたわけじゃないんだけど、流れ着いたんです。何か助けになるものを見つけたいと思って」と素直に事情を話す。女性は困惑した表情を浮かべながら、周囲に隠れている仲間に目で合図を送り、警戒を解くように促した。

やがて、数名の人々が石柱の陰や崩れた建築物の隙間から集まってくる。年配の男性や、細身の青年など、その服装はいずれもこの都市の独特な文化を感じさせるものだった。

「この都市は……われらが先祖が守り続けてきた場所。この世界がかつて空を自由に往来していた時代の名残だと伝えられている。だが、あなたたちのように外から来る者は滅多にいない」

先ほどの年配男性が口を開き、古い言葉遣いでそう話す。アレンたちは顔を見合わせ、思わず胸を高鳴らせる。やはりここには古代文明の遺産があり、それを守る人々がひっそりと暮らしているらしい。

「これまでにも、“空賊”と名乗る連中が何度か接近した形跡があった。われらは都市の深部に閉じこもり、外部との接触を避けてきたのだ。そっとしておいてくれれば、それでいいと」

別の若者が言うと、リタが申し訳なさそうに「私たちは空賊とは正反対です。むしろ、奴らに襲われかけたことすらあるんです」と声を上げる。すると住民たちは微妙に表情を和らげ、少しだけ興味を抱いたようだった。

「この都市には古代の機械や文献が残っていると聞いたことがあります。もしよかったら、見せてもらえないでしょうか。僕たちはただ、船をもっと安全に飛ばす技術を探しているんです」

アレンの熱心な言葉を受け取り、住民たちは困惑しながらも相談を始める。年配男性が「むやみに外の者に技術を渡すわけにはいかないが、彼らが信用に足るかどうか見極めたい」と言い、若い女性が「それに、ここには失われた兵器すら眠る可能性があるのよ。外の争いに利用されるのは避けたいわ」と警告する。

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