大空の船 – 第5章 後編

やがて一行は、書庫跡へ案内される。壁が崩れ、天井が一部落ちた空間だが、中央には大きな石柱や書棚が並び、古文書の束や粘土板のようなものが多数保管されている。埃っぽい空気の中、慎重にランプをかざす住民が「どうぞ。あまり読み解けないものばかりだが、もしあなたたちが新しい解釈を持っているなら見てほしい」と言う。

アレンはリタとともにその書棚に近づき、古文書の一片を手に取った。ところどころ文字がかすれているが、少なくとも現代の言語とはまるで別物だ。しかし、古い文字列の中に、見慣れた図形や計算式のような記号が混じっている部分がある。

「これ、浮力制御やエンジンに関する記号かな……どう見ても、力学かエネルギーの概念図だよ」

リタが目を輝かせ、アレンも「やっぱりそうだ。気体の膨張や回転軸の数式みたいだ」と同意する。二人は興奮を隠せないまま、住民たちに「もう少し調べさせてもらっていいですか?」と懇願する。彼らも驚いた様子で「もちろん、無闇に持ち出さないなら」と慎重に承諾した。

こうして、アルバトロスのクルーと古代都市の住民たちとの奇妙な協力関係が始まる。わずかに残る古代文字や機械の断片を読み解きながら、外の世界に続く可能性を示すアレンたちに興味を持った住民も少なくない。逆に住民たちは「自分たちが守り続ける遺産を悪用されたくない」という恐れから、クルーの人柄や目的を探ろうとする。

都市の深部には、さらに高度な仕掛けや巨大な装置が眠っているとも言われるが、住民たちがすぐに案内してくれるわけでもなさそうだ。まずは互いに信頼を築き、少しずつ“古代文明の真髄”に近づけるかどうか――この邂逅は、アルバトロスが新たな力を得る大きな転機になるに違いない。

そして、それを試すように都市の外縁から吹き抜ける風が、崩れた石柱を鳴らし、長い時を経てもなお息づく古代の気配を漂わせていた。

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第4章:前編後編 第5章:前編|後編

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