大空の船 – 第7章 前編

アルバトロスがゆっくりと雲のレイヤーを突き抜けた瞬間、クルーの視界に衝撃的な光景が広がった。そこにはまるで巨大な空鯨にも似た、もしくは翼を持つ竜のようにも見えるシルエットが悠々と漂っていたのだ。虹色にきらめく鱗のようなものが部分的に見え、身体の一部が柔らかく揺れながら、雲を突き破るように移動している。

「うわ……でかい……」

リタが思わず声を上げる。確かに巨大と言っても過言ではない。アルバトロスの何倍もある胴体が雲の光を反射し、ぞっとするほど幻想的な姿を描き出す。風を操るかのように滑らかな動きで上昇し、甲板に強い突風を吹き込ませる。アレンたちは船体を抑えるのに必死になりながら、その生物を見つめるしかなかった。

「攻撃してくる様子は……今のところないな」

ラウルが声を張り上げる。ライナスは完全に魅了されたかのように望遠鏡を外し、「あいつは……何を考えてるんだろう。俺たちのほうに気づいているのか、それとも単に大空を漂っているだけなのか……」と呟く。アレンも同じ疑問を抱く。あの規格外の生物は知性を持つのか、ただの巨大な自然の存在なのか、まったく分からない。

すると突然、その生物が大きく方向を変え、アルバトロスのほうへ近づいてきた。翼のような部分をはためかせ、悠然とした動きとは裏腹に、実際の速度はかなりのものらしい。あっという間に距離が縮まり、船の周囲を旋回し始める。

「来る……! みんな、衝撃に備えろ!」

アレンが叫ぶと、クルーは甲板の手すりやロープを握りしめる。ラウルは操縦輪を必死に抑え、リタはエンジンを安定出力に固定しようと動く。その生物が吐き出す息なのか、単なる風圧なのかは分からないが、船体を激しく揺さぶる突風が吹き荒れる。

「うわあっ!」

タイトルとURLをコピーしました