大空の船 – 第7章 前編

思わず独り言のように口を開くと、リタがうなずいて「古い記録に“天空龍”とか“空鯨”とか呼ばれる伝説があったよね。でも、まさか本当にいるなんて……」と興奮を含んだ声で応じる。

「これから先の航行にも、こういう生物に会う可能性があるってことだ。もし攻撃的な種類がいたらどうする?」

ライナスがそう問うと、ラウルは渋面を作って「正直、武装しても敵う相手じゃないな。やはり何かしら共存の方法を見つけるしかない」と返す。

「共存、か。あの生物が暴れ回るタイプじゃなければいいけど……それにしても、一瞬だけど、意思を伝えようとしてた気がするのよね。あの鳴き声というか、振動というか……」

リタはまだ耳を押さえながら、あの低く重い振動を思い出していた。

アレンはふと視線を遠くに移し、心の中で呟く。あの振動は、空を支配しようとする人間への警告だったのか、それとも仲間だと認めた合図だったのか。確かなことはわからないが、また再会する日が来る気がしてならない。空にはまだ多くの謎がある。アルバトロスでの旅は、紅蓮のガイウスや古代都市だけでなく、こうした自然の神秘――まるで神話のような存在たちとも向き合う冒険なのだと、改めて理解した。

「ひとまず、大きな被害はなかったし、このまま飛行を続けよう。高度を少し下げて、船体を確認してから航路を再設定しようか。あの生物を追うのは危険すぎる」

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