大空の船 – 第7章 前編

リタがバランスを崩し、甲板の上に倒れ込みそうになるが、ラウルが素早く手を伸ばして支える。ライナスも耐え切れず尻餅をつきながら、「こいつ、本気で襲ってるわけじゃないのに、これだけの威圧感かよ……!」と青ざめる。確かに、飛びかかってくるわけでもないが、その存在だけでアルバトロスが飲み込まれてしまいそうだ。

「もしかして、こちらの動きを探ってるのかもしれない」

アレンが腹の底から声を張り上げ、リタやライナスに指示を出す。「近づきすぎるな! でも、突然攻撃に転じたらすぐ回避だ!」

しばらく船の周りを旋回していた巨大飛翔生物は、その長い胴体をゆったりと翻し、一瞬、アレンたちと正面から向き合うような形になる。巨大な瞳があるかのように見え、そこが光を帯びているようにも感じられる。息を呑むアレンたちの前で、その生物は深い鳴き声のようなものを放った。雷のように低い音が胸に響き、全身の血が震える感覚に襲われる。

「うっ……な、なんだこの音は……」

リタが両耳を押さえ、アレンも頭にズシリと響く振動で視界がゆらぐ。ラウルとライナスも必死に耐えながら、しかし攻撃性は感じられないことを理解する。まるで意思疎通を試みようとしている――そんな不可解な予感が脳裏をかすめた。

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