大空の船 – 最終章 後編

ライナスが即座に扉を押し、重い金属音を伴ってそれがわずかに開き始めた。アレンは勢いよく飛び込み、ライナスも後に続く。扉の奥は大きく広がった指令室のような空間で、周囲の機器が緊急警報を発しながら赤く点滅している。中央には一際大きな操縦台と計器が並び、何人かの空賊が慌ただしく操作を試みているのが見えた。その最奥、ひときわ高いデッキの上に立つ男性――長いマントをひるがえし、片手に漆黒の銃剣らしき武器を握っている。その姿こそ、紅蓮のガイウスに違いない。

「ここまでよく来たな、アルバトロスの小僧……」

紅蓮のガイウスがくぐもった声で言い放つ。火傷の痕にも見える朱色の刺青が左頬に入っており、その眼は鋭く血のように赤い。まるで空を焼き尽くす炎を内に秘めているかのような気配だ。周囲の空賊兵たちは主人の一声を待つように武器を構える。

アレンは剣を手に構えながら、真っ向から視線を合わせる。ライナスはしなやかに後ろを警戒しつつ、いつでもサポートできる体勢をとっている。

「紅蓮のガイウス……! お前は空を恐怖で支配しようとしてるだけじゃないか。俺たちはそんな世界を望んでない!」

アレンが叫ぶと、ガイウスは嘲るように口を歪める。

「恐怖? 違うな。これこそが真の自由さ。力を得た者が空の規律を作り出す。それが俺の理想だ。貴様らのように中途半端な夢を語るだけの小僧が、この要塞を落とせると思うか?」

言葉と同時に、ガイウスは銃剣を振りかざす。何かの機構が起動したのか、床下のタレットがせり出し、アレンとライナスに弾丸の嵐を浴びせる。

「ライナス、伏せろ!」

アレンはとっさに声を上げ、二人で床へ転がるように回避する。激しい銃撃が指令室のパネルを粉砕し、火花が散る。周囲の空賊兵も一斉に斉射してくるため、動きが封じられる寸前だ。だが、その瞬間、要塞のシステムに異常が発生したような音が鳴り響き、銃撃が唐突に途切れる。リタが外部から要塞の武器制御を強制停止させたのだろうか。

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