大空の船 – 最終章 後編

要塞が制圧されて数日後、空の各地から集まった船乗りや冒険者、そして一部の政府関係者がこの巨大施設に入り、負傷者の救護や物資の整理を進める。アレンたちは一時的にこの場を離れ、アルバトロスを修理すべく浮遊島へ戻る予定だった。

「こうして見ると、あの要塞も少し静かになったな。砲撃音が鳴りやまないと思ってたが」

ライナスが感慨深げに眺め、リタは隣で「私たちにできることはひとまずやりきったね。これで空の旅も、また再開できる」と微笑む。ラウルは甲板でロープを収納しながら、「もう二度とこんな大規模な要塞戦はごめんだぜ」と冗談めかして息をつく。

アレンはアルバトロスの舵を操作しながら、改めて仲間たちの顔を見回す。古代都市や天空龍との出会い、空賊との死闘を経て、皆の絆はより固く、そして成長を感じさせるものになった。

「さあ、俺たちの旅はまだ終わらない。空には謎だってたくさん残ってる。ガイウスが使った水晶の力だって、俺たちが正しく扱えば新しい可能性を広げられるかもしれないよ」

その言葉に全員が同意するように笑みを浮かべる。リタは「次はどこへ向かおうか」と胸を躍らせ、ライナスは「もっと遠い空域に浮遊島があるって噂もあるしな」と冒険心をかき立てられる。ラウルは慎重ながらも、「しばらくは修理と休息が必要だが、落ち着いたらまた大空を飛ぼう」と言う。

要塞から離れ、ゆっくりと高度を上げていくアルバトロス。その船上でアレンはまぶしい光を浴びながら、微かに見える地平線の先へ想いをはせる。紅蓮のガイウスの野望を挫き、空に新たな平和が訪れたとはいえ、旅はこれからも続く。広大な大空を舞台に、未知の浮遊島や伝説の天空龍、古代文明の遺産がまだ数えきれないほど眠っているのだから。仲間たちの笑顔と、アルバトロスの翼を信じて、アレンは再び帆を張る。

世界は広く、空には無限の地平がある――その事実を胸に刻みながら、彼らは風に背を押され、次なる空域へと飛び立とうとしていた。

第1章:前編後編 第2章:前編後編 第3章:前編後編
第4章:前編後編 第5章:前編後編 第6章:前編後編
第7章:前編後編 第8章:前編後編 最終章:前編|後編

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