大空の船 – 最終章 後編

敵の首領が沈黙すると、要塞内の混乱は一気に収束に向かった。リタが制御を奪った端末を使って非常事態モードを解除し、砲台は停止したまま動かない。ラウルは外部へ信号弾を放ち、空賊から逃げ続けていた商船や小さな浮遊島の人々が続々と要塞へ集まり始める。要塞を明け渡した空賊たちの多くは捕虜となり、中には脱走を試みる者もいるが、既に警戒が厳しく、成功は難しいだろう。

「……やったな、アレン」

ライナスが擦り傷だらけの顔で笑い、アレンもへたり込むようにして甲板――いや、指令室の床に座り込む。激戦の疲労は甚大だが、これで紅蓮のガイウスの野望は潰え、空賊要塞は陥落したわけだ。

「うん……あとは、負傷者を手当てしつつ、ここをどう管理するか考えないと。もう空の脅威にはさせない」

アレンが息をついて言うと、リタが「ほんとに、お疲れさま」と微笑む。ラウルは片手に付いた血を拭い、「これで空が少しは平和になるといいがな。まだ細かい空賊や問題は尽きないだろうが、大きな柱を折れたのはでかい」と視線を投げかける。

アレンたちはガイウスを拘束し、複数の捕虜として見張りを置いた上で、要塞の核心部を確認する。そこにはやはり古代文明の力を歪めて利用しようとした痕跡や、危険な飛行兵器の設計図が散らばっていたらしい。リタとライナスはそれを回収し、悪用されないよう厳重に封印する手配を考える。

「あの古い水晶石も、ゴードンのところで研究してもらったほうがいいね。ガイウスは強引に使ってたみたいだけど、きちんと管理しないとまた争いの種になる」

リタが冷静に言い、アレンは大きくうなずく。空は人の欲望を映し出す鏡のようなものだ――力を得た者が心を狂わせれば、どんな文明や技術も破壊の道具になる。しかし、だからこそ、空を守る意志と、仲間たちの絆が大切なのだと、アレンは痛感する。

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