エル・リーフ村では、土壌改良の試みが徐々に成果を上げ始めていた。大河一樹やシルヴィアたちが主導して実施した堆肥づくりや魔力循環の実験が功を奏し、荒廃した土でも少しずつ作物が育つようになったのだ。といっても、まだ村全体を賄うほどの量ではないが、今まで何を植えても枯れる一方だった土地に緑が芽吹く様子を目にし、村人たちの表情は明るさを増している。
「ここまで成長するなんて、夢のようだわ!」
畑で育ち始めた作物の苗を見つめながら、シルヴィアが歓声を上げる。彼女の魔法が一役買ったこともあって、魔力に対する村人の見方も少しずつ変わってきたらしい。むろん、魔力の枯渇そのものが解決したわけではないが、土壌と魔力を融合させるという考え方が成果につながりつつあるのだ。
一方、一樹は作物の“次なるステップ”を見据えて動き始めていた。単に作物を育てるだけではなく、より生育の早い品種や、この世界の環境に適した形質を持つ作物を作れないかと考えたのである。
「俺の世界では“品種改良”と呼ばれていました。より丈夫で収量の高い作物を選抜して育てたり、交配させたりして特色を強化するんです。この世界でも同じようにできるはず。魔力の助けがあれば、さらに可能性が広がるかもしれない。」
集まった村人たちが興味深そうに耳を傾ける中、エリアスが感心したように頷いた。「ただ育てるだけじゃなく、より良い作物を生み出すってことか……。そんなこと、本当にできるのか?」
「試してみないとわからないけど、やる価値は大いにあると思います。」