プロローグ 第1話 第2話 第3話 第4話
第5話 第6話 第7話
魔力の暴走を抑えるために行われた魔法陣の改良は、想定以上の効果をもたらした。シルヴィアの魔力制御理論と、一樹が提案した土壌への魔力緩衝システムが見事にかみ合った結果、畑や森に溢れかけていた過剰な魔力が安定した形で循環するようになったのである。これによって農地の作物は壊滅を免れ、村を襲っていた魔物の侵入もしばらく鳴りを潜める形となった。折しも、盗賊団や貴族派の暗躍も守りを固めたガイたちによって大きな被害には至らず、混乱の連鎖はようやく収束の兆しを見せ始める。
それでも、直接的な戦闘や魔力の暴走を完全に止めきれたわけではない。村の外れにはいまだ魔力の名残が残り、森の奥深くに潜む魔獣が完全に排除されたとも言いがたい。しかし、一樹たちの研究成果が確実に実を結びつつあることを確認した村人たちは、恐怖の中にも光を見いだしていた。枯れ果てていた畑には、今も緑色の葉が広がり、成長を続ける作物の姿がはっきりと見える。時間はかかるかもしれないが、この土地は再生できる――そんな希望が村全体に広がっていた。
「おまえさんたち、よくぞここまで踏ん張ってくれた。わしは正直、村が潰れる寸前だと思っていたんじゃよ。」
村長のドルトが安堵の表情を浮かべながら、一樹やシルヴィア、エリアス、ガイたちをねぎらう。その言葉に、一樹は少し疲れた面持ちで微笑み返した。