ベータが吠え、追加の小判を一気にチャージ。魔力放射が眩しさで視界を奪う。
刹那、ガルドが突っ込んだ。
腕には鍛冶箱を改造したリリィ製“反魔力シールド”。課税分を強制吸収する魔法陣が刻まれ、小判の光が吸い込まれていく。
「会計は黒字が基本だろ!」
ガルドの大剣が甲冑に叩きつけられ、ベータごと壁にめり込む。
私は即座に経費計上のセルを“過剰支出”へと書き換え、ベータ本人の魔力残高を0へ上書きした。甲冑の光が消え、主計長は昏倒。
残り二十五分。
回廊の奥、黄金の両開き扉が見えた。その向こうが大法廷。
だが床に散った小判が、ひとりでに重なり合い、新たな数字陣を描き始める。
「第二陣来るわ!」
マリエルが法典を構えた。
私は腕章を強く握り、深呼吸する。
(数字は味方だ。帳簿は剣。迷いはない)
コインが鳴るような硬い音がこだまし、ドーム天井の天秤に影が走った――最終決算まで、あと二十四分。


















