ニューロネットの夜明け – 第1章:闇のコード|後編

「もっと深く潜り込まないと、真相がわからない。でも下手に動いたら逆探知されて私たちが危険に晒される。ヴァルは真剣にハッカー狩りをしてるらしいし……」

「そうだね。これだけの大企業だし、開発を邪魔されるのは避けたいはず。慎重にいく必要があるよ」

ミアは椅子をくるりと回転させ、別の端末に向き直る。そこでも多重暗号化を解除するためのツールが並行して動いているようだった。しかしツールの進捗バーは思うように伸びず、時間ばかりが過ぎていく。

「現時点では、“プロジェクト・シナプス”みたいな名前がかいま見えるくらいかな。このログの中で何度か呼び出されてる。でも詳細が不明すぎる」

「プロジェクト・シナプス……意識と関係ありそうな響きだね」

エリカは少しだけ顔を曇らせてつぶやく。その名前の奥に、まだ見ぬ危険が潜んでいる予感がした。

息苦しさを感じたのか、エリカは倉庫の扉を半分だけ開け放つ。すると夜は明けきっていないものの、外の空気が入り込み一気に温度差が広がった。ミアは自分の端末から立ち上がり、手にしたタブレットを操作しながら、少し離れたテレビモニターへ視線を移す。そこでは朝のニュース番組が流れており、アナウンサーが深刻そうな表情で何かを読み上げていた。

「続いてのニュースです。脳内チップを使った不正アクセスにより、数十人分の個人情報が流出した疑いが報じられています。専門家は今後、社会全体でのセキュリティ意識の向上が必要だと——」

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