ニューロネットの夜明け – 第4章:地下組織との接触|前編

倉庫内に入ってきた男は、長めのコートにフードをかぶり、大きなゴーグルで顔の上半分を覆っていた。警戒を解かぬまま、エリカは距離を保ちつつ口を開く。

「あなたがサイモン?」

「ええ。直接会って話すほうが手っ取り早いからね。メールの返信をもらった時点でここを特定したよ。もっとも、あなたの居場所を突き止めるのに手間はかからなかったけど」

サイモンは淡々と言葉を続けるが、その言葉には含みがあった。エリカが眉をひそめたまま沈黙していると、彼はポケットから小型のストレージを取り出し、テーブルの上に置く。

「これは、政府と大企業が手を組んで進めている陰謀の証拠だ。表のメディアには絶対に流れない情報が詰まっている。君が知りたい“プロジェクト・シナプス”についても、ある程度まとめてある」

エリカは半信半疑のまま、目を細めてストレージを見つめる。慎重に扱わなければウイルスが仕込まれている可能性もあるが、どうやらサイモンは本気で何かを見せようとしているようだ。やがてサイモンはコートのフードをずらして、ゴーグルを外す。やや長めの黒髪、鋭い目つき。それでいて整った面差しが印象的だった。

「インフォリベレーションって組織、知ってる? 俺がリーダーを務めている。政府や大企業が裏で進める計画を暴露するのが目的だ。電脳を駆使した情報収集や、社会を動かすための活動をしている」

エリカは聞いたことがあるような気がしていた。ネットの片隅では時々名前が噂され、企業や権力者の不正を暴くハッカー集団、あるいはテロリスト寸前のラディカル組織、などと囁かれていた。

「確かに聞いたことはあるわ。でも、あなたたちのやり方は過激すぎるとも……」

エリカが言いかけると、サイモンはやや苦笑交じりに答える。

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