ニューロネットの夜明け – 第4章:地下組織との接触|前編

「まぁね。俺たちのやり方に穏健とは言えない部分があるのは自覚してる。だが、権力があまりにも巨大で、一度や二度の抗議や暴露程度じゃ社会は変わらない。だからこそ、ラディカルに動かざるを得ない場面もあるんだよ」

その時、倉庫の奥からミアが警戒した顔で出てきた。背後にはスマートガンのような簡易的武器を隠し持っているが、相手に悟られぬよう慎重な距離を保つ。

「証拠ってのは、本当に信用できるものなの?」

ミアの問いに、サイモンは「確かめてみればいい」と言わんばかりにストレージを指さす。

エリカはそれを受け取り、倉庫の隅にある独立した端末で慎重に解析を始める。ウイルス検査を走らせながら、中身のファイルをざっとチェックすると、そこには意外なほど克明なデータが保存されていた。数枚の文書には、政府系研究所と複数企業の間で交わされた秘密協定の痕跡がはっきりと残されている。さらに“プロジェクト・シナプス”に関する計画書らしきものも散見され、意識統合や脳波制御といったキーワードが並んでいた。

「これは……どこから手に入れたの?」

「俺たちインフォリベレーションのネットワークを侮らないほうがいい。君はヴァル・セキュリティや政府研究所を探っているようだけど、彼らの企みはそれだけじゃ終わらない。世界規模で人々の脳内チップを統合するような狂った計画が進行中だと、俺たちは確信してる」

サイモンの声には熱がこもっている。その一方で、エリカは恐怖と興味が同時に湧いてくるのを感じる。目の前のファイルにある情報は、彼女が独自に掴んだ断片データを裏付けるかのように見えた。

タイトルとURLをコピーしました