ニューロネットの夜明け – 第4章:地下組織との接触|前編

「わかった。考えさせて。いきなり過激な行動に移るつもりはないけど、あなたたちが掴んでいる情報は私も必要としているわ。こちらが入手したデータの一部も、交換条件として話すかもしれない」

エリカが慎重な声で答えると、サイモンは満足そうにうなずく。

「それでいい。俺はいつでも連絡を待っている。君とミアの腕があれば、我々もより深く政府と企業の闇に入り込める。必要ならその道具立ては用意しよう」

そう言うと、サイモンは踵を返し、再びフードを深く被って出口へ向かう。

「できれば俺たちが協力して、全ての真実を世に知らしめたいと思っている。失礼するよ」

ドアが閉まると、埃の舞う倉庫に沈黙が戻った。エリカはまだストレージを握りしめたまま、思案顔で立ち尽くしている。インフォリベレーションの協力は、確かに巨大な支えになるかもしれないが、自分たちが振り回される危険もある。彼らの一部が計画している破壊工作に巻き込まれれば、民間人や被験者にさらなる危険が及ぶこともあるだろう。

ミアがそっと声をかける。

「どうするつもり? あのサイモンって人、信用しきれないけど、私たちだけじゃ確かに限界があるよね」

「わからない。でも、少なくとも大きな力が動いている以上、私たちだけじゃ到底立ち向かえないのは事実……」

エリカは倉庫の壁に寄りかかりながら、かすかに唇を噛む。プロジェクト・シナプスの闇を暴くためには、さらなるリソースと情報が必要だ。インフォリベレーションという地下組織は、その一翼を担ってくれるかもしれない。しかし、彼らのラディカルな手段がどこへ向かうのか——それを掌握できるかどうかが大きな問題となる。

埃っぽい夜の空気を感じつつ、エリカはストレージを慎重に保管し、ミアのほうへ目をやる。互いの不安げな視線が交わるが、今はこの一歩を踏み出すしかない。そう思いながら、エリカはゆっくりとモニターの電源を落とした。

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