ニューロネットの夜明け – 第4章:地下組織との接触|前編

「エリカ、私たちにもできることはあるけど、相手が大きすぎる。インフォリベレーションの情報網や資金力は、確かに魅力的かもしれない。ただし、一方的に利用されてしまう危険もあるんじゃない?」

ミアの言葉にサイモンは肩をすくめる。

「利用するかどうかは考え方次第だ。お互いに協力し合うことで、より大きな力を得られるって話さ。わかりやすい取引を提案してるだけだ」

エリカは目を閉じ、一呼吸おいてから問いかけた。

「組織の中で、あなたたちの方針に異を唱える人はいないの? ここまでラディカルな手段をとることに躊躇するメンバーもいるんじゃない?」

一瞬、サイモンの表情が険しくなるが、すぐに元の落ち着いた口調に戻る。

「もちろん、いるさ。情報拡散で世論を動かして平和的に改革するべきだ、という穏健派も少なくない。だが、現実を見てほしい。すでに政府と企業がガッチリ手を組んでる。穏やかなやり方では到底間に合わない……そう考える強硬派も多いんだ」

エリカとミアは顔を見合わせる。その姿から、インフォリベレーション内部にも統一した意志があるわけではなく、対立が生じていることがうかがえる。過激に傾けばテロリズムにも等しいが、穏健路線では大きな結果を得られないかもしれない。

「あなたはどちらなんだろう、サイモン」

エリカがそう問うと、サイモンは少し微笑んだ。

「俺は……状況次第だと思っている。平和的な手段で解決できるならそれがいい。しかし、時間がないなら強硬策も辞さない。それがリーダーとしての役割だろうさ」

エリカはその曖昧な返答に引っかかりを覚えながらも、手元のストレージに視線を落とす。そこに込められた情報は間違いなく価値がある。インフォリベレーションという組織の力も、敵に回すよりは味方につけたほうが得策だろう。しかし、結果として自分の行動がどんな波紋を呼ぶのか、簡単には想像できない。

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