赤い封筒 – 第5話

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 それから数日後の朝、アキラはシンイチから呼び出しを受け、人気の少ない喫茶店へ足を運んだ。店内は古びた木のカウンターとレトロな照明が醸し出す独特の雰囲気がある。テーブルに着くなり、シンイチは持参した資料を数枚並べて見せた。かつて刑事として培った人脈を駆使し、こつこつと集めた未解決事件の概要だ。

「どうやらな、被害者たちは全員、過去にミツルが不当な扱いを受けたとされる出来事に、何らかの形で関わっていた可能性が高い。直接加害行為をした人間もいれば、その家族も含まれているらしい。これは警察の捜査情報じゃなくて、俺が個人的に探った情報だが……信憑性はある。」

 シンイチの声は低く、どこか焦燥感を帯びていた。アキラは資料に目を落としながら息を呑む。リストアップされた被害者の名前や職業の横には、大学時代やその後の職場環境などでの関係性が簡潔に記されている。そこには明確な証拠こそないが、「ミツルへのいじめ、あるいは悪意のある評価を下していた」「ミツルの主張を封殺した」などのキーワードが複数確認できる。アキラは額に手を当て、困惑の色を隠せない。

「本当に、ここまで繋がってるのか……。となると、ミツルが彼らに復讐しようとしている、あるいは誰かがミツルの代わりに復讐してるってことなのか?」

「そう考えるのが自然だと思う。もっとも、ミツルが直接手を下してるかはまだ確証がない。ご存知の通り、彼は失踪扱いになっているわけだし。」

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