赤い封筒 – 第8話

 夕方に差しかかるころ、アキラは再びシンイチの事務所を訪れ、文集を机の上に置いた。そしてざっと内容を説明すると、シンイチも険しい表情を浮かべてページをめくる。

「ここまで直接的な“復讐”という言葉が書かれているとはな……。大学時代の事実を踏まえると、相当追い詰められてたんだろう。いまの一連の事件も、やはりミツルの生存を前提に考えないと筋が通らないかもしれない。」

「でも、もし既に死んでいたら? この文集を使って誰かが代わりに復讐しているのか……」

「いずれにせよ、犯人はこの文集の精神を引き継いでいる。あるいは本人か……ってところだな。」

 シンイチは深く息をつき、資料のメモ帳に新たな項目を追加していく。いじめ、理不尽な評価、文集、失踪。そして現在の赤い封筒の詩による連続事件――これらが一本の線で結ばれてきた。しかし、それが最終的にどこへ行き着くのかは、まだ見通せない。

「アキラ、おまえに一つ聞きたいことがある。もし本当にミツルが生きていて、この事件を仕掛けてるとしたら、おまえはどうしたい?」

「……彼を止めたい。だけど、どこかで俺も償わなきゃならないと思ってるんだ。あのとき何もせずに、黙認してしまった責任は消えないから。」

タイトルとURLをコピーしました