赤い封筒 – 第9話

「そこで、俺は張り込みを強化して、二十四時間体制で郵便局近くを監視することにした。仲間を何人か雇ってな。そしたら、ついに昨夜、赤い封筒らしきものを投函する人物を尾行することに成功したよ。」

「本当か!」

 アキラは思わず身を乗り出す。これだけ翻弄されてきた末に、ようやく犯人の姿を捕らえる手がかりが出てきたのだ。シンイチは一枚の写真を指で突きながら話を続けた。そこには、薄暗い街灯の下をフードを被った人物が歩いている様子が写っている。その人物の姿が拡大されている画像を見ると、髪色はわからないものの体格はやや華奢で、顔をマスクと帽子、さらにフードで徹底的に隠している。

「こいつを尾行して、駅に向かうのを確認したんだが、途中の人混みで完全に姿を消された。仲間と合流した形跡はない。たぶん変装を変えたんだろうな。俺たちが確認した時には、すでに見た目も背丈も違う人間がそこに紛れていた。」

「じゃあ、尾行は失敗……でも、少なくとも投函する瞬間までは追えたわけだよな。」

「ああ、それだけでも大きい。ただ、映像を解析してみると、フードの下に一瞬だけ見える頬のラインが、大学時代のミツルの写真とかなり似通っている。もちろん確定ではない。整形か特殊メイク、あるいはマスクの可能性すらある。」

 アキラは写真を凝視する。ぼやけた影の輪郭と、微妙な身体のバランス。まるでミツル本人がそこにいるような錯覚を覚える一方、何か違和感もある。もし本当にミツルが生きているとしたら、わざわざこれだけ徹底して顔を隠す理由は何なのか。普通に考えれば指名手配犯のように姿を隠すのは当然とも言えるが、死亡記録がある人物がこうまで大胆に姿を現しているのに、わざわざ防犯カメラに捉えられるような行動を取るのは不可解でもある。

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