赤い封筒 – 第9話

 すると事務所の扉が開き、ユキノが焦った様子で飛び込んできた。彼女の頬はわずかに紅潮し、心なしか瞳が揺れている。

「すみません、急に押しかけちゃって。でも大事なことなんです。」

「どうした? 何かあったのか。」

 アキラが立ち上がると、ユキノは手に抱えた封筒を差し出した。それはこれまでのように真っ赤な封筒ではない。白い封筒に黒い文字で「アキラ様」とだけ書かれている。開封してみると、中には一枚の紙にいくつかの詩の断片が引用されていた。驚くべきことに、そこにはこれまで赤い封筒で送られていた詩のキーとなるフレーズや、文集に記載されていた言葉が整然と並べられている。

「これは……誰が、どういう意図で送ってきたんだ?」

「差出人は不明ですが、私のところに届いたんです。編集部宛じゃなくて、個人宛て。封筒の中にはコピーしたような文字が貼り付けられていて、明らかに先生とミツルさんを繋ぐ詩を示しているように見えます。」

「これも“赤い封筒”の犯人の仕業なのか? いや、わからない……逆に、今回だけ色を変えてるのが妙だ。あるいは第三者が何かを訴えかけようとしてるのかもしれない。」

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