赤い封筒 – 第10話

「ここまではっきり脅しが来るなんて……警察に連絡しよう。さすがに放っておけない。」

「ええ、私もそう思います!」

 ユキノは慌てて電話を取り出し、警察に通報を入れた。ほどなくして数人の刑事が編集部へやって来る。しかし、封筒を見た彼らの反応は予想以上に冷淡だった。脅迫と判断するには法的にグレーな表現で、どこにも「殺す」と明言していない。しかもイラストが殺人を示唆しているようにも見えるが、それを予告状と受け取るかどうかは難しいというのだ。

「現状、具体的な日時や場所の指定はなく、『アキラ』という名指しも本名かどうか断定できませんし……現実的には捜査令状を取れる段階ではないですね。ですが、念のためパトロールは強化します。」

 捜査員の一人がそう言い残して引き上げていく。残されたアキラとユキノは、やるせない気持ちを抱えたまま編集部のデスクにうずくまるように座り込んだ。はっきりした脅迫とも言い切れないという曖昧な状況。だが、アキラにとっては紛れもない予告であり、近い将来に自分の身へ危険が及ぶという実感が否応なしに迫ってくる。

「警察に頼っても、こんな状態じゃ動いてくれないんですね……。先生、本当に危ないですよ。何かあったら……」

「わかってる。だけど、部屋に引きこもるわけにもいかない。いや、むしろ家の中にいても安全とは限らないな。」

 言い終えたところで、シンイチから電話がかかった。アキラが状況を説明すると、彼は怒りをあらわにする。

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