「それはもはや立派な脅迫だろう。警察が動かないなら、俺たちが動くしかない。おまえをどこか安全な場所に移そう。俺の仲間の知り合いが管理してるアパートがある。そこなら監視カメラもあるし、しばらく身を潜めておけ。」
「……でも、そこに隠れていても事態は変わらない。犯人が俺を狙っているなら、いずれ探し当てるかもしれないし、こんな状態じゃ何も解決しないだろう?」
「馬鹿を言うな。今は身を守るのが優先だ。これまで散々翻弄されてきたんだから、少しは慎重になれよ。」
電話口のシンイチは強い調子で説得を試みるが、アキラは決意したように言葉を返す。
「だからこそ、俺は外に出るんだ。逃げ隠れしているだけじゃ拉致があかない。あいつ、ミツルかもしれない犯人をおびき出すには、自分が餌になるしかない。どうせ警察が動かないなら、俺が動いて目の前に引っ張り出すしかないんだ。」
「待て、何を言い出すんだ。そんな無謀なこと……冗談じゃないぞ。」
「冗談じゃない。本気だ。文集を見てもわかったんだ。あいつは“自分を見捨てたやつら”を許さない。過去に傷つけられた分を取り返すために、俺や周囲を追いつめる気なんだ。なら、こっちから正面に出ていく。俺だけじゃない、また他の誰かを巻き込むかもしれない。もう犠牲者は出したくないんだ。」

















