その裏には、自分が救われる日は来るのか、という問いかけのような文章が走り書きされていた。言葉の端々にはアキラの名が伏せるように記されており、まるで「おまえはどう思う?」と問いかけているようにも読める。アキラは思わず息を呑んだ。ミツルが自分に抱いていたのは、ただの憎しみでもなく、妬みでもない。もしかすると一縷の期待や友情、あるいは尊敬だったのかもしれない。
「こんな詩を書いていたなんて……」
声にならない感情が込み上げ、アキラは思わず床に座り込んでしまう。今回の事件の裏でミツルはあまりにも道化のように扱われた。既に亡くなっていたという事実をねじ曲げられ、彼の詩が凶行の道具にされてしまった。それを考えると、深い悔しさと申し訳なさに支配される。
そのとき、奥のほうから紙の束が崩れるようにしてこぼれ落ちた。拾い上げると、それはミツルの書き込みが散見される文集の数ページで、いずれも最後の段階で手を入れた痕跡がある。そこには彼がぎりぎりの精神状態で綴ったと思われる文言が含まれていた。
――おまえが生きているなら、俺の詩をちゃんと読んでくれ。
――誰にも読まれない詩なら、何のために書くのか……
――孤独の深さに沈むのは俺一人で十分だ。
アキラの視界が滲む。自分がもっと早くに気づいていれば、結果は違っていたのだろうか。今さら詮ないことかもしれないが、脳裏に去来するのは取り返しのつかない後悔ばかりだ。


















