風が知っている – 第3話

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悠斗、紗枝、進輝の三人は、スケッチブックに描かれた次の場所へと向かう準備を整えた。それは、村のはずれにある古びた祠(ほこら)で、悠斗のスケッチブックにはその祠が神秘的な光に包まれて描かれていた。彼らは、この場所が悠斗の記憶に何か手がかりをもたらしてくれることを期待していた。

「ここがその祠か…」悠斗が言葉を失うほど、現実の祠はスケッチと酷似していた。紗枝は悠斗の反応に気づき、「悠斗、ここに来たことがあるの?」と尋ねた。悠斗は頭を振り、「わからない…でも、なんだか懐かしい気がする」と答えた。

進輝が祠の扉をゆっくりと開けると、中から古びたが清々しい空気が流れ出てきた。三人は祠の中に入り、中央に置かれた小さな祭壇を見つけた。祭壇の上には、色あせたが美しい絵が描かれた石板が置かれていた。

悠斗はその石板に見入りながら、ふと、子どもの頃にこの祠を訪れた記憶が鮮明に蘇ってくるのを感じた。「ここに来たことがある…子どもの頃、祖父に連れられて…」悠斗の声は震え、目には涙が浮かんでいた。

紗枝と進輝は悠斗を支え、彼が落ち着くのを待った。しばらくして、悠斗は深呼吸をし、「この石板、祖父がよく話してくれた伝説の一部だと思う。でも、その内容は思い出せない…」と言った。

進輝が石板を詳しく調べ、「ここに刻まれているのは、村を守るために戦った英雄の物語だ。この英雄が、悠斗の祖父が語っていた伝説の主人公なのかもしれない」と推測した。

三人は祠を後にし、村に戻って長老にこの発見を報告した。長老は興味深く話を聞き、「その石板は、確かに我々の村に代々伝わる重要な物の一つだ。それが悠斗さんの記憶に関連しているとは…」と言葉を濁した。

その後、村の中で悠斗のことが少しずつ話題になり始めた。彼が祖父から聞いた伝説や、自身の記憶を取り戻そうとする姿勢に、村人たちは次第に温かい目を向けるようになった。子どもたちは好奇心旺盛に悠斗の周りを集まり、彼に色々な質問を投げかけた。

ある日、悠斗は子どもたちと遊んでいる最中に、ふとした瞬間に新たな記憶の断片が蘇るのを感じた。それは、かつてこの村で楽しく過ごした日々の断片だった。悠斗は、自分が村と深いつながりを持っていること、そして何らかの理由で離れていたことを確信するようになった。

紗枝と進輝は、悠斗が少しずつ過去を取り戻していることを喜び、彼を支え続けることを誓った。三人の間には、共に謎を解明し、悠斗の記憶を取り戻すという共通の目的が生まれていた。

夜、悠斗は星空を見上げながら、自分の中に眠る過去と未来への架け橋を見つける決意を新たにした。紗枝と進輝もそばにいて、三人は静かに明日への希望を語り合った。悠斗の記憶を辿り、村の秘密を解き明かす旅は、まだまだ続くのだった。