異世界農業革命 – 第3話

「うーん、この辺はだいぶ酸性が強いみたいですね。微生物にとっては少し厳しい環境かも……」

「それなら、木灰や貝殻の粉を混ぜると中和できるかもしれない。そうすれば微生物も活動しやすくなるはず。」

「わかった。やってみます!」

 シルヴィアは言葉通り、村人とともに灰や貝殻の粉を集めに走る。彼女の魔法だけに頼るのではなく、一樹の科学的な知識を組み合わせることで、新たな可能性が少しずつ見えてきた。

 このような地道な取り組みを続けながら、エル・リーフ村の畑はわずかずつだが再生の光を帯び始めていた。もちろん、すぐに収穫が増えるわけではない。しかし、何もせずに枯れるのを待つだけだったときに比べれば、はるかに前向きな空気が流れ始めている。エリアスは村人たちに指示を出し、協力体制を整えていく。シルヴィアは実験の成果をこまめに記録し、魔法による効果を検証する。ガイも必要に応じて護衛の合間に畑作業を手伝い、さらには周辺のモンスターの動向を探るなど村の安全に力を注いでくれていた。

 一樹の指導する堆肥づくりや改良農具の試作は、村にとってまったく新しい風を吹き込んでいる。土壌だけでなく、人々の心にも「何かが変わるかもしれない」という小さな期待が芽生えつつあった。魔力枯渇という大きな壁はまだ残っているものの、一歩ずつ前へ進む実感がある。その積み重ねが、いつか村全体を大きく変える力になると、一樹は信じてやまない。

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