異世界農業革命 – 第4話

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 エル・リーフ村の畑には、わずかながらも緑の芽が顔を覗かせ始めていた。土壌改良と魔力循環の実験が進んだおかげで、一部の作物は以前の枯れた土とは比べ物にならないほど元気に育ちつつある。村人たちの表情にも希望が戻り、エリアスは自分の役割を再認識して、村長代理としての責務を全うしようと奮起していた。シルヴィアは連日畑を巡回し、魔法の影響や植物の生育状況を細かく記録している。ガイは盗賊や魔物の襲撃に備え、村の外れに簡易的な柵や見張り台を設置するなど、防衛体制を少しずつ強化していた。

 そんなある朝、エリアスのもとに一人の村人が慌てて駆け込んできた。「大変だ、領主さまの役人が大勢で村に向かっているらしい!」という報告に、エリアスは青ざめた顔でドルトの家へ急ぐ。ちょうど畑で作業をしていた一樹も呼び出され、簡単な事情を聞かされる。どうやらこの村が急速に豊かになりつつあるという噂を嗅ぎつけた領主が、多額の税と締め付けを要求するために役人を送り込んできたらしい。

「領主さまの管轄内にある村だから、当然税は納めなきゃならないのはわかる。でも、まだ作物も十分に育っていない状況で、いきなり大きな負担を課されたら……」

 エリアスは苦悩の色を隠しきれない。ここ数年、エル・リーフ村は収穫がほとんどなく、領主もあまり目を向けていなかったという。しかし、村が蘇り始めたという噂が広まれば、高額な税をかけて利益を得ようとするのは当然の流れかもしれない。

 一樹は真剣な表情で言葉を選ぶ。「まずは話し合いでどこまで折り合えるか試してみましょう。こんなに早い段階で大きな負担を強いられたら、せっかくの再生計画が頓挫してしまう。エリアス、あなたが代表として交渉する形でいいかな?」