星降る夜の奇跡 – 第5話

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村での復旧作業がようやく落ち着き始めた頃、サヤは偶然手に取った地元の新聞で“数年に一度の大規模な流星群が接近中”という見出しに目を留めた。その記事によると、流星群のピークはもうすぐで、もし天気が良ければ夜空を華やかに彩るはずだという。ちょうどその日は、ユウタとサヤの二人にとっても大事な節目になりそうな予感があった。都会からの仕事の誘いを受けるかどうか悩んでいたサヤは、最後にもう一度だけあの星空を見てから決断しようと心に決める。一方、ユウタも新聞を読んで、まるで浮き立つような表情を隠せなかった。「この日だけは絶対に晴れてほしい」と、彼は何度も口にする。

夜になるとまだ雲が多く、ここのところ星を見る機会はほとんどなかったが、それでも天気予報は好転の兆しを示している。復旧作業の合間を縫いながら、ユウタは久しぶりに自宅の観測器材を入念にチェックした。メインの天体望遠鏡に加え、双眼鏡や予備のレンズ、バッテリーやライトなど、必要なものを一点ずつ揃えては、ほこりを払う。サヤも「万が一寒くなったときに備えて」と、厚手の服やブランケット、熱い飲み物を保温できる水筒などを準備していく。二人とも、心のどこかで今回の流星群を特別なものだと感じていた。村の空がどんなに曇っていても、この夜だけは晴れ渡るようにと強く願っているのだ。

そして迎えた流星群の当日、日中の空は薄い雲が漂っていたが、夕方を過ぎるころになると嘘のように雲が消え始めた。刻一刻と深まる夜を前に、「もしかしたら、本当に奇跡が起きるかもしれない」とサヤは胸を弾ませる。ユウタも支度を急いで済ませ、いつもの展望台へ行こうと促す。外に出ると、冷え込んだ空気が頬を刺すようだが、空には一筋の雲さえ見えない。「これは期待できそうだ」とユウタは真剣な眼差しを浮かべながら、サヤの手を引いて山道を登り始める。

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