ニューロネットの夜明け – 第7章:研究所への突入|前編

中に足を踏み入れると、すぐに独特の消毒薬のような匂いが鼻を突く。白く光る蛍光灯が無機質な廊下を照らし、その先にはセキュリティゲートが並んでいるのが見える。研究所内部はビアンカの指示で警備が強化されているはずだが、今のところ大きな警報は鳴っていない。ミアが既にネットワークにハッキングし、緊急アラートの一部を抑え込んでくれているのかもしれない。

「ここからが本番ね……。サイモン、あなたは先に配置を確認して。私はミアと一緒に次のゲートを無効化してみる」

エリカが耳に装着した通信デバイスを操作すると、外部のメンバーが状況報告を送ってくる。外周で警備の意識をそらす作戦も同時に進行しているようだ。おそらく、表の入口付近で陽動が行われているのだろう。

「メインフレームがある地下へは、エレベーターか階段を使うしかない。もちろんどちらにもセキュリティがかかっているわ。どうする?」

ミアが焦りを隠せないまま尋ねると、エリカはすぐに回答した。

「エレベーターは内部認証があるし、逆探知されやすい。階段を使うしかないわ。少し時間はかかるけど、そのほうが見つかりにくい」

サイモンが頷き、先頭に立って廊下を進み出す。モニターの角に設置された監視カメラには既に妨害プログラムが仕込まれており、一時的にオフラインになっている。だが、いつ復旧するかはわからない。

こうしてエリカたちは、ビアンカの研究所へと本格的に足を踏み入れた。外部からはインフォリベレーションがセキュリティ妨害を続け、警戒網を可能な限り麻痺させているが、いつまでもそれが持続する保証はない。メインフレームへ到達するにはいくつもの関門を突破する必要がある。

まだこの先にはドローンの室内パトロールや、警備員による巡回も待ち構えているだろう。それでも、エリカたちにはレオナルドの極秘情報と、これまで積み上げてきたハッキングスキルがある。息を詰めるような緊迫感の中、三人は足音を消して階段へ向かい、やがて冷たいコンクリートの通路へと姿を消していく。

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