「借金取り……具体的にはどなたが?」
田辺は呻くように肩をすくめる。
「そりゃ、組合の連中じゃねえ。漁業権が絡む金の話だ。辰巳がペンダントの鑑定を担保に担いだもんだから、面倒なことになったんだ。だが、それを利用する連中がいるなら——」
言いかけた言葉を飲み込み、田辺は顔を上げた。
「だが、何かが俺たちを操ってる感じはある。手袋切れ端にあった刺繍は、松永家の家紋と同じ模様だった。あのペンダントの話は、一部の古老しか知らねえ伝承だ。組合の理事どもも、『何かに脅されている』と漏らしていた」
玲は席を立ち、小さな紙袋を取り出す。その中には、倉庫街で見つけた刺繍入りの手袋の切れ端が入っている。
「ご協力感謝します。組合にも黎明の会の影響が及んでいる。次は、倉庫街で会合があったとの情報を基に、さらなる証拠を探しに行きます」
高橋がうなずき、二人は組合事務所を後にした。朝陽が港の水面を金色に染める中、呪いの連鎖を断ち切るための次なる調査が静かに動き出していた。



















