第1章:前編|後編 第2章:前編|後編 第3章:前編|後編 第4章:前編|後編
第5章:前編|後編 第6章:前編|後編
アジトの薄暗い一角で、エリカはモニターに映る渦巻くコードの羅列を睨んでいた。外部から手に入れた政府研究所の断片的なデータを、さらに深く解析しようとしているのだが、どこからか強力な追跡プログラムが仕掛けられ、アクセスを試みるたびに警告のアラートが鳴り響く。サイモンらインフォリベレーションのメンバーが周囲で応対に追われるなか、エリカは緊張の面持ちでキーボードを叩き続けていた。
「まずいな……奴らも本気だ。こちらが公開した情報を逆探知して、協力者を次々に狙ってる」
横に座るサイモンが苦い顔で端末を覗き込む。すでにインフォリベレーションの複数のサポーターが逮捕や拘束といった形で姿を消し、ネットワーク上でも不審な沈黙が広がり始めていた。政府と企業が連携し、本格的な“情報封鎖”を試みているのは明らかだ。
「こうなったら、さらに決定的な証拠を世間に示すしかないわ」
エリカは言葉に力を込めるが、自分でもその困難さを痛感している。彼女のハッキング技術があっても、対抗勢力には資金力も人員も豊富にある。今までは限られたメンバーで隠密に情報を暴露してきたが、相手側も対策を講じてきた結果、インフォリベレーションのネットワークは追い詰められつつあった。
そのとき、奥のほうでミアが悲鳴に近い声を上げる。彼女は別の端末に向かい、防御システムを監視していた。
「エリカ! このサイバー攻撃、レベルが違う! 多層暗号をかいくぐってメインサーバーに直撃しようとしてる!」
ミアのモニターには赤い警告ランプが何重にも点滅し、まるで津波のように押し寄せるデータパケットが示されていた。彼女は緊急遮断を何度も試みるが、追撃の手が休む気配はない。外部のサポートラインにもエラーが相次ぎ、協力者の一部が接続不能になっていることがわかる。