翌朝、アキラはシンイチからの電話で目を覚ました。書斎のソファに倒れ込んだまま仮眠をとっていたらしく、身体のあちこちが痛む。通話ボタンを押すと、いつになく興奮したシンイチの声が耳に飛び込んできた。
「ちょっと急ぎの話だ。昨日、赤い封筒の投函があった郵便局近くの防犯カメラ映像を入手できた。そこに怪しい人物が映ってたんだよ。」
「怪しい人物……それ、はっきり顔がわかるのか?」
「微妙だが、顔の輪郭と姿勢がどうも見覚えがある。俺にはミツルに似ているように見える。でも、確証はない。しかも、ミツルは確か数年前に死亡したはずだよな?」
「……ああ、そう聞いてる。でも、亡くなったはずの人間が投函してるのか? それとも別人が成り代わってるのか?」
アキラは電話越しに思考を巡らせる。ミツルの存在が色濃く浮上してからというもの、謎は深まる一方だ。失踪だと思われていたところが、実は死亡記録まで残っている。その一方で、防犯カメラには明らかにそれらしい人影が映り込んでいる。シンイチの言うとおり、事態は複数の可能性をはらんでいた。