夜明けのペンダント – 第3章: 第2話

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第3章:第1話|第2話

黎明の会の脅迫状を手に、星ノ宮宝飾を後にした秋山玲と高橋航は、夜明け前の港へ向かった。水平線にはまだ朝焼けの名残がわずかに灯り、防波堤を撫でる波音だけが静かに響く。

「ここで見つかったんです」

高橋が指差す先には、錆びた鉄柵で囲まれた古い防波堤が見える。昨夜、防犯カメラの途切れた時間帯に辰巳が立ち寄った場所だという。

二人が防波堤へ近づくと、夜露に濡れた石畳の上に、不自然に並んだ足跡が続いていた。船繋ぎの錨を思わせる跡と、小さなスニーカーの跡が交互に刻まれている。

「足跡が途中で消えて、また現れている。誰かに抱えられて移動した可能性も……」

玲は手袋越しに足跡の深さを測り、波打ち際へ視線を移す。そこにはぬるりと光る絹袋の破片と、薄紅の宝石の欠片が散らばっていた。

「これが——」

高橋が欠片を拾い上げると、朝陽に反射して冷たい光を放つ。玲はそれを手に取り、バッグへとしまい込んだ。